食欲不振のうさぎさんが来院し、臼歯の不正咬合と診断したときには、私はよく飼主さんに
「臼歯の不正咬合、簡単に言えば奥歯の噛み合わせが悪いということです。」などと説明し、
「食べないのは、尖った奥歯のせいで口が痛いせいかもしれません。麻酔をかけて確認してもいいですか?あたっている奥歯は削りますし、ぐらぐらしていたら抜歯します。」と、治療について説明します。
臼歯の不正咬合の治療は、残念ながら噛み合わせそのものを治す治療ではありません。あくまで口の中に傷をつくったり、上手くかめないほど伸びてしまった歯をカットして餌を食べやすくする治療です。
ウサギの歯は歯根が生きている限りは伸び続けますので、一旦噛み合わせが悪くなると、一回で終了ということはめったにありません。最初の治療が若いうちに始まると、その後何回も麻酔をかけて治療することになります。
治療の間隔はまちまちで予測できませんが、年を取ってくると治療の間隔は空いてきます。
そうこうしているうちに、中には歯根が死んでしまったり、歯が抜けてしまったりして、奥歯が口のなかにほとんど見えなくなってしまう場合があります。
奥歯のないうさぎです。
以前のブログで、ウサギにとって歯は命と書きました。では歯がないウサギは生きていけないのでしょうか?
おっとどっこいウサギはそれほど弱くはありません。たしかに自然界では歯がないウサギは生きていけないでしょう。
しかしながら、人と生活をともにするウサギは人が手助けしてあげれば、歯が無くたってしっかり生きていけます。
私がそのことに気がついたのはうさぎの診療を初めてから数年たってからのことでした。
次のブログにその経過と手助けの仕方を書いていきましょう。