ウサギはなにを食べるべきか?
今から16〜7年前、私が開業した当初、ウサギを病院につれて来られる飼主の方の多くがウサギは雑食でお肉こそ食べないがその他のものは何でも食べるとお考えでした。事実、チョコレートや卵焼きまで食べていたうさぎさんもいました。
病院につれてきてもらえるウサギたちは飼主さんにとても大事にされており、飼主の方々はとても熱心に私の話を聞いてくれました。
それでも当時のウサギの寿命は今と比べるとかなり短く、ここ15年の間に伸びた寿命は食生活と飼養形態の改善によるところがかなり大きいと考えています。
余談ですが、ウサギを診察につれてこられる飼主の方はまじめで几帳面な方が多く、皆さんご自分のうさぎさんの様子をよく話してくださり、またご自宅での看護もきちんとなさいます。私はウサギの飼主さんが大好きです。
さて、今現在ウサギはなにを食べるべきか?と問われれば、多くの飼主さんが牧草を与えなくてはいけないと答えてくれるでしょう。
ウサギは完全な草食獣で、草のみで体を維持していくことが出来る動物です。本来なら大麦やトウモロコシなどの穀物も必要ありません。
このように草だけ食べてやっていける草食獣はウサギ以外にもたくさんいますが、皆、消化管の一部を発酵タンクに進化させています。
発酵タンクを持つ動物の代表を二つ。牛は胃の一部を発酵タンク(第一胃)として、馬は盲腸を発酵タンクとして活用しています。ウサギは馬と同じように盲腸を発酵タンクに使っています。
そもそも、体をつくるのに必要なたんぱく質は草には少量しか含まれていません。ウサギは微生物の力を借りて盲腸内で植物の繊維質を分解し、微生物ごと(ここが大事)盲腸便を食べる事ことによって、たんぱく質やビタミン類を摂取しているのです。
人間も古来より発酵技術を使っていろいろな食物をつくってきました。発酵させる場合、最も大事なことはその発酵に有用な微生物を増やし雑菌をいれないことです。
これは体に発酵タンクを持つ草食獣も同様で、タンクを有用微生物に適した環境にすることが健康のために最も大事なことといえます。
ウサギにとっての有用微生物はさまざま知られていますが、まとめると草に含まれるセルロースを分解し嫌気発酵するものと言うことができます。
ウサギに草を与えることはそれらの微生物に食べ物をあげるのと同じことなのです。
では、どうすればウサギに牧草、草をたくさん食べてもらえるのか?
第3話に書いていく事にします。