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ウサギ小話 第1話 「硬いものを囓らせてはいけない」

「芸能人は歯が命」

昔のCM のフレーズです。

もちろん、犬や猫にとっても歯は大事ですが、ウサギにとって、歯の問題は切実です。

ウサギの歯は上下あわせて28本、そのすべての歯が一生の間のび続けます。このようにのび続ける歯を常生歯と呼びます。

よく、伸びていくのだから、何か硬いものを囓らせて歯を摩耗したほうがいいのでは、とお考えになる飼い主の方がいます。

しかしながら歯は体の中でもっとも硬い組織で、骨よりも硬いのです。身近にあるたいていの物より硬いと言ってよいと思います。

では、のびる歯はどうやって削られていくのでしょうか。ウサギの場合は、上の歯は下の歯で、下の歯は上の歯によって削られています。

ウサギのように、植物の繊維を長時間咀嚼しなければならない動物では、上下の歯が正しく咬合し、咀嚼によってすり減ってもその分が伸びてくるということが生きていくのにとても重要なことなのです。

先ほどは歯が硬いと書きましたが、常生歯の場合は伸び続けるために、歯肉と歯の間には隙間があります。もしもウサギが板のように厚みがあってある程度かたいものを囓ると、歯はすり減らずにただ曲がってしまうのです。

いったん歯が曲がってしまうと上下の正しい咬合ができなくなり、すり減らなかった歯の一部が口の中を傷つけて、ウサギは食べることができなくなってしまいます。

私が毎日のように、飼い主さんに「硬いものを齧らせてはいけない」と言っているのは、このような理由からです。

では、いつも囓りたがるあなたのウサギさんにはどのようなものを与えればいいのでしょうか。

第二話に書いていくことにします。