長年ウサギの臼歯(奥歯)の不正咬合を診てくると、一体正常な咬合はumeusa3どこにいってしまったんだろう?と思えるくらい様々な歯並びを経験します。
もともと、外側に開いているべき上の臼歯が内側に傾き、さらにイノシシの牙のように前に向かって長くのびていたりします。
このように極端に変形した臼歯を持つウサギは、たいていは歯の根が化膿して顎の骨が融けてしまっていることが多く、臼歯としての役割をはたせないばかりか、軽くひっぱるだけで容易に抜けてしまう事が多いのです。
ウサギの歯は伸び続けるので、当初は抜けてしまった歯の対向歯(上の歯に対して下の歯)が伸びすぎて困ったことにならないか心配しました。

しかしながら、実際はもともと対向歯にもすでに異常が生じている事がほとんどで、何回か処置を行ううちに歯根が死んでしまい伸びなくなってしまうか、抜けてしまいます。
そうこうしているうちに、中にはほとんど臼歯がなくなった(正しくは歯根は残っていても口のなかに歯を認めない)ウサギが出現します。

私が初めてすっかり歯がなくなってしまったウサギを診たのは10年以上前のことですが、ジム君といってロップイヤーの男の子でした。ジム君は最初の治療の段階から、すでに臼歯を噛み合わせることが困難になっており、ペレットを細かくしたりしてなんとか食事をとっていました。
数回の処置ののち、ジム君は口の中に臼歯がまったくみえなくなってしまいました。臼歯の処置をする必要がなくなったのです。
臼歯の不正咬合の完治ではなく、ある意味卒業といっていいような状況でした。
飼主さんはご自分でいろいろ工夫して、ジム君の食べやすいようにペレットを加工していました。
ペレットを水で溶き、団子にしてそれを月見団子のように重ねておくと、上のほうから食べてくれるようでした。
私たちは、ジム君のお月見団子と呼んでいました。水のかわりにリンゴをすりおろしたり、青汁をつかったり、市販の野菜ジュースをつかったりもされていました。
伸びすぎた歯による口内炎ができなくなると、食べるのが楽になったのか、お月見団子を自分から要求して、その後も何年も生き延びることができました。

ただし、これでめでたしめでたしとはいきません。
このようなウサギは、歯の根、(歯根)が化膿しており、膿みが溜まる歯根膿瘍と戦い続けなければならなくなります。ジム君もこの歯根膿瘍と最後まで闘病しなければならなかったのです。

次のブログには歯根膿瘍について書いていきたいと思います。かなり専門的な内容になりますが、出来るだけかみくだいて書いていきたいと思います。